物語文の読解では、登場人物の気持ちを想像するだけでは足りません。場面、出来事、行動、会話を本文から見つけ、「だからこの気持ちになった」と説明できるように読むのが基本です。
「どんな気持ちですか」「なぜそうしたのですか」という問題で迷う小学生に向けて、答えの探し方と記述の組み立て方をまとめます。本文にない経験を足さず、書かれている手がかりから考えるのがポイントです。
先に答え:物語文は5つの順で読む
| 順番 | 見るもの | 自分に問いかけること |
|---|---|---|
| 1 | 場面 | いつ、どこで、誰がいる? |
| 2 | 出来事 | 人物に何が起きた? |
| 3 | 行動・会話 | 気持ちはどの動きや言葉に出ている? |
| 4 | 心情 | その人物はどう思った? |
| 5 | 理由 | 本文のどこを根拠にした? |
気持ちは「行動」と「出来事」から考える
物語の人物は、いつも「悲しい」「安心した」と直接言うわけではありません。気持ちが表れた行動や会話、その前に起きた出来事を拾い、心情と理由をつなぎます。
| 手がかり | 読み取れること | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 出来事 | 気持ちが変わったきっかけ | 気持ちを問われた場面の前後 |
| 行動 | 言葉に出ない心情 | 立ち止まる、隠す、見つめるなどの動き |
| 表情・声 | 喜び、不安、怒りなどの様子 | 顔、声の大きさ、話し方の描写 |
| 会話 | 人物の考えや相手への思い | かぎかっこの中と、その直前直後 |
| 場面 | 心情が変わる背景 | 天気、時間、場所、周囲の人物 |
| くり返し | 物語の前後での変化 | 同じ言葉や行動が出る箇所 |
たとえば、人物がうつむいて返事をしないなら、落ち込んでいる可能性があります。ただし、その一文だけで決めず、直前に何が起きたか、後でどんな行動をしたかも読みます。同じ「黙る」でも、怒っている場合と考え込んでいる場合があるからです。
設問の形で探す場所を変える
| 設問の形 | 答える内容 | 根拠の探し方 |
|---|---|---|
| どんな気持ちですか | 心情+その理由 | 行動、会話、出来事を探す |
| なぜそうしたのですか | 行動のきっかけや目的 | 直前の出来事と人物の考えを見る |
| どんなことを思いましたか | 人物の考えや気づき | 会話や心の中の言葉を確認する |
| 気持ちが分かる表現 | 本文中の描写 | 表情、声、動きを抜き出す |
| 最初と最後の違い | 人物や関係の変化 | 同じ場面・言葉を比べる |
「どんな気持ち」と聞かれたら、心情語を一つ探して終わりにせず、きっかけになる出来事を確認します。「なぜそうした」と聞かれたら、行動の直前にある目的や考えを探します。問いの形を先に見れば、本文を読み返す範囲を絞れます。
場面の前後を比べて変化を読む
| 本文の情報 | 読み方 | 答えへのつなぎ方 |
|---|---|---|
| 場面のはじめ | 人物が何を期待しているか見る | その後の出来事と比べる |
| 出来事の直後 | 最初に出た行動や会話に注目する | 気持ちのきっかけにする |
| 相手の言葉 | 人物がどう受け止めたか考える | 返事や表情を根拠にする |
| 場面の終わり | 気持ちが変わったか確認する | 最初との違いをまとめる |
物語の山場では、人物の気持ちや人間関係が変わります。場面のはじめと終わりを比べると、変化の理由が見えやすくなります。「最初は一人で不安だったが、友達と練習して安心した」のように、変化ときっかけを一緒に整理します。
記述問題は4つの部品で作る
| 答えの部品 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 人物 | 誰の気持ちか | さきは |
| 心情 | どう思ったか | 安心した |
| きっかけ | なぜそう思ったか | 友達が一緒に練習してくれたので |
| 文末 | 問いに合う形 | 〜気持ちになった。 |
「どんな気持ち」の答えなら、人物、心情、きっかけ、文末をそろえます。心情だけを一語で書くのではなく、本文の根拠が伝わる程度に理由を加えます。字数指定がある場合は、同じ意味の言葉を重ねるより、きっかけになる出来事を優先します。
短い例で答えの作り方を確認
次の表は、発表前の人物を想定したオリジナルの短い例です。心情語だけでなく、どの行動や出来事が根拠になるかを見ます。
| 設問 | 本文の手がかり | 答えの例 |
|---|---|---|
| なぜ、さきは返事をしなかったのですか。 | 発表の原稿を握ったまま、友達の方を見られなかった。 | 発表がうまくできるか心配で、返事をする余裕がなかったから。 |
| さきは友達の言葉を聞いて、どんな気持ちになりましたか。 | 友達が「一緒に練習しよう」と笑って言った。 | 一人で悩まなくてよいと分かり、安心した気持ち。 |
| 最後にさきが前を向けたのはなぜですか。 | 友達と練習し、言う順番を思い出せた。 | 練習をして発表できそうだと思えたから。 |
一つ目は「返事をしなかった」という行動だけでなく、「原稿を握ったまま」「友達を見られない」という描写を合わせて、心配の理由を作っています。二つ目は友達の言葉、三つ目は練習した結果が根拠です。答えの言葉が本文にそのままなくても、根拠を外さずに言い換えられます。
学年別の読み方
| 学年の目安 | まず見るところ | 書く練習 |
|---|---|---|
| 1・2年生 | 場面と出来事 | 誰が何をしたかを一文で言う |
| 3・4年生 | 行動と会話 | 気持ちとその手がかりをセットにする |
| 5・6年生 | 前後の変化 | 複数の根拠をつないで記述する |
低学年は、まず「誰が何をした」を言えるようにします。中学年では、行動や会話と気持ちを結び付けます。高学年では、場面の前後を比べて、複数の根拠を一文にまとめる練習へ進みます。難しい言葉をたくさん覚えるより、本文の手がかりを丁寧に拾う方が先です。
気持ちの答えは、本文に書かれた心情語を見つければ終わり、というものではありません。物語では、人物が言葉にできない思いを行動で表すことがあります。たとえば、何度も時計を見る、返事を短くする、相手の後ろからついていくといった描写も、心情を考える材料です。
迷ったときは、候補を一つに決める前に「その気持ちなら、この行動をするだろうか」と確かめます。本文に出ている行動と合わない候補を外し、残った気持ちにきっかけを付けます。答えを書いたあとも、本文の一文を指せるか確認すれば、想像だけの答えになりにくくなります。
保護者が一緒に読む場合は、「この子はどう思った?」とすぐ聞くより、「気持ちが分かる行動はどれ?」と先に尋ねると、本文を見る習慣につながります。正解の言葉を当てることより、どの描写からそう考えたかを説明できることを大切にします。
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無料:物語文の心情メモ
気持ちの言葉だけを探さず、場面、出来事、行動、理由を順番に書き出すためのメモです。記述問題の答えを作るときにも使えます。
| 欄 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 場面 | いつ・どこで起きたか | 雨の朝、運動場 |
| 出来事 | 人物に起きたこと | リレーの順番が近づいた |
| 行動・会話 | 気持ちが表れた手がかり | 何度も靴ひもを結び直した |
| 気持ち | そのときの心情 | 失敗しないか心配 |
| 理由 | 本文のどの言葉から考えたか | 前に転んだ経験がある |
※「その気持ちは本文のどこから分かる?」を一行で答えてから、心情を書きます。
間違えやすい読み方
| 間違え方 | 起きやすい理由 | 見直し方 |
|---|---|---|
| 気持ちを一語だけ書く | 理由を本文から探していない | 出来事や行動を一つ足す |
| 自分ならどうするかで答える | 人物と自分を混同している | 人物の行動・会話へ戻る |
| 直前の一文だけを見る | 場面全体を読んでいない | 気持ちが変わる前後を読む |
| 選択肢の強い言葉に引かれる | 本文との一致を確かめていない | 本文にない断定表現を外す |
| 変化を逆に書く | はじめと終わりを比べていない | 同じ言葉や行動を表にする |
提出前のチェック
| 確認すること | できていればよい状態 | 直す方法 |
|---|---|---|
| 場面 | いつ・どこかが分かる | 前後の段落を読み直す |
| 人物 | 誰の気持ちか明確 | 主語を補う |
| 根拠 | 行動や会話を指せる | 本文に線を引く |
| 理由 | 「なぜ」が説明できる | きっかけの出来事を足す |
| 文末 | 設問に合っている | 気持ち・理由の形をそろえる |
よくある質問
気持ちを表す言葉が本文にないときはどうしますか。
行動、表情、声、会話、周囲の出来事を探します。人物が何をしたかだけでなく、何をしなかったかも手がかりになります。本文に根拠がない気持ちを自分で足さないことが大切です。
「うれしい」と「安心した」はどう区別しますか。
その気持ちになったきっかけを比べます。願いがかなったならうれしさ、心配がなくなったなら安心というように、出来事とのつながりを本文で確認します。
気持ちの答えに理由まで必要ですか。
「どんな気持ち」とだけ聞かれても、記述問題では本文の根拠が伝わるように理由を添えると安全です。選択肢問題では、本文と最も合う表現を選びます。
会話文はどこを読めばよいですか。
かぎかっこの中だけでなく、話す直前の出来事、話し方、返事の後の行動を読みます。同じ言葉でも、声の様子や場面によって受け止め方が変わります。
人物の気持ちが途中で変わるときの読み方は?
変化の前後で、出来事、行動、会話を並べます。「最初は〜だったが、〜をきっかけに〜になった」という形にすると整理しやすくなります。
物語文を読むのが遅いときはどうしますか。
最初から速く読もうとせず、段落ごとに「誰が・何をした・どうなった」を短くメモします。慣れたらメモを減らし、場面の変化だけを印します。
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まとめ
物語文の気持ちは、人物の行動や会話、場面の変化から読み取ります。答えを書くときは、心情だけで終わらせず、本文のどの出来事がきっかけだったかを添えます。
- 場面と出来事を確認する。
- 行動、表情、会話を根拠として探す。
- 気持ちときっかけをつなげる。
- 場面の前後を比べて変化を読む。
- 答えを書いたら本文の一文を指せるか見直す。


